検討:「1)リングを地球と同じ3.05mの高さにする」
まず1)、リングの高さを地球と同じにした場合を考えてみましょう。この場合、プレイヤーはリングの倍の高さまでジャンプできますので、リングよりも高い位置からのシュートの機会が増えることになります。
立っている場合は手が届かず、ジャンプするとその倍の高さまで飛び上がれるというのは地球上では考えにくいですが、敢えて例えるなら、リングが1.5m程度の高さでコートに腰を下ろすか車椅子に座るなどして低い姿勢でプレイし、ジャンプ時は立ち上がってジャンプしても良い、といったよう場合でしょうか。座った状態で手を伸ばしてもリングには届きませんが、立ち上がってジャンプするとリングの上の位置からシュートを放てるという感じです。
地球でのバスケットボールでは、シュートを放つ位置から見てリングは基本的に上にあるのに対し、1)の場合は下に位置する場合もあるわけですから、リングは三次元空間の中に位置づけられることになります。この場合、ディフェンダーもリングの高さ以上にジャンプし、体でリング全てをカバーすることもできますが、ゴール・テンディングのルールにより、リングよりも上にジャンプしシュートを放たれたら防ぎようがありません。高くジャンプすれば何の障害もなくシュート体勢を取れるわけですから、シュートが容易に決まります。
※ゴール・テンディングとは、ショットされたボールがリングよりも上にあって、更に落下している間にボールにオフェンスが触れた場合に得点にならず、ディフェンダーが触れた場合には得点になるというもの。
先ほどの低い姿勢でプレイする例えの場合でいうと、ディフェンダーが立ち上がったりジャンプしてディフェンスできないとしたら、シュートは簡単に決まります。逆に、ゴール・テンディングをなくしてリングよりも高い位置から放たれるシュートをブロックできるとした場合、今度はディフェンダーに有利になりすぎてしまいます。従って、地球と同じ高さにするのは無理という結論です。
検討:「2)リングの高さを7.7mとするが、リングの直径を大きくする」
次に2)の場合、高さは7.7mでリングのサイズを大きくする場合を考えます。仮にリングの直径を二倍にしたら高さが7.7mでもシュートは決まりやすくなるでしょうか。
※バスケットボールのリングの直径は約45cm、ボールの直径は約24cm
リングの高さが7.7mの場合、フリースローラインからリングまで距離を地球上のコートに当てはめると、だいたいセンターラインとスリーポイントラインの中間あたりからの距離に相当します。ボールも軽くなっていますからリングにボールが届かないということはないでしょう。リングの直径が二倍もあれば逆にシュートが決まりやすいくらいかも知れません。またバックボードの大きさも、リングの高さ同様、どの程度の大きさにするのが良いかは試行錯誤の上決定する必要がありそうです。
なお、リングが高くなった分見上げる角度は大きくなり、フリースローラインに立つプレイヤーから見ると、バスケットボールの場合の約15度に対しムーンバスケットボールでは約60度となります。地球のコートで60度というと、リングから120cmくらいの距離から見たリングに相当します。3m程度の高さであれば、リングのすぐ下以外では意識して上を見なくても自然とリングが目に入りますが、7.7mの高さとなると見上げないと視界に入りません。リング下ではかなり急角度というか真上を見る感覚ですね。見上げる角度という問題はあるものの、リングの直径を大きくすればコート上からのシュートに対しても7.7mという高さは障害にならないと考えます。ジャンプ力に応じた高さでもありますので、ムーンバスケットボールの特徴を活かすには調度良さそうな高さです。
検討:「3)リングの高さを3m~7.7mの間で適切な高さに決める」
3)は1)2)の折衷案です。ゴール・テンディングのルールをムーンバスケットボールでも適用したいと考えていますので、リングよりも上にジャンプできる空間が広いとディフェンス側は防ぎようがありません。リングよりも上に滞空できる時間がある程度短い6mの場合で考えて見ましょう。この場合も、1)よりはリングの上に滞空できる時間が短いとはいえ6m近くジャンプできるので、高くジャンプすれば余裕でシュートを決められそうです。
このように考えてくると、ジャンプしたプレイヤーがリングよりも上にいる時間が長くならない高さで、リングが地球上のコートに比べて高く遠くなる分シュートが決まりやすいよう直径をある程度大きくし、バックボードもこれに合わせ拡大することが必要です。
結論:コートの高さ、コートの広さ、リングのサイズ、バックボードのサイズ
検討した結果、リングの高さを7.7mとします。つまり2)案です。
コートの広さは、これは地球と同じ28m×15mとします。リングが高いのでアンバランスな感じもしますが、空間的にプレイエリアが広がっておりプレイヤー数を1チーム5名とした場合、コートを広げると間延びしてしまいそうですので地球と同じ広さとします。
リングの直径はリングが遠くなる分大きくし、約1.5倍の65cmとします。バックボードも少し大きくし、縦横比同じで面積が2倍となる254.4cm×148.5cmとします。
高さ7.7mは、先に考察したように身長185cm、ジャンプ力540cm(地球では90cm。助走してジャンプする場合を想定)の人がダンクシュートできる高さです。地球でのジャンプ力の差5cmが月面では30cmの差になりますので、7.7mの高さでも余裕でリングの上まで手が届くプレイヤーがいることは確かですが、リングよりも高い位置に腕をあげていられる時間はそれほど長くありませんので、ディフェンスにとってもオフェンスにとってもそれほど優位でも不利でもないと考えます。
問題はリングが7.7mも上にあるとコート上からは真上を見上げるような感覚になる点ですが、そもそもローポストから見ればリングはほぼ真上ですし、ローポストのエリアが広くなったと考えてやむなしとします。
以下の図は、バスケットボールのコートに、ムーンバスケットボールのリングを当てはめてみたものです。コートから高さ7.7mの間の広い空間をプレイヤーがジャンプしパスを回したりシュート、ディフェンスする様は迫力があることでしょう。
検討:側面に壁は必要か
ここでちょっとアイスホッケーとホッケーの違いをみてみましょう。
アイスホッケーでは、コートを壁で囲むことで跳ね返るパックが使えるようになっています。氷上のパックはスピードが速いことやプレイヤーの進む方向を簡単に変えられないこと等から、壁がないとすぐにパックが外に出てしまうことや、壁を活用する方がスピード感を損なうことなくプレーを続行できることが理由の一つでしょう。もちろん屋内の施設の場合がほとんどなので、元から周りに壁があることにもよるでしょう。
ここで、ムーンバスケットボールでも同様に、高く飛び上がれるという特徴を生かせるよう、コートの仕組みを工夫する場合を考えてみます。プレイヤーが高く飛び上がることができ、空中でのパス回しの機会が増えることでボールが場外に出てしまうケースも多くなりそうですので、これを防ぎ「空中戦」をより有効に活用できるような仕組みを考えてみます。
まずアイスホッケー同様に壁を作ることを考えます。
これは地球上でもそうですが、体育館の壁に向かって走って足を壁にかけて駆け上がるようにすることで、地面からジャンプするよりもはるかに高く飛び上がることができます。これを月面でも行うことで更に高くまでジャンプでき、壁を蹴ることで斜め上にも強くジャンプできるようになります。コートを囲む壁はある程度の高さが必要ですので、ここではリングの高さ7.7mの半分程度の4mとし、壁にぶつけるパスも可として周りから見えるよう透明な材質を使用します。今では見かけなくなりましたが、バスケットボールのボードゲームに透明なドームでコートを覆っているものがありました。天井までは覆いませんがそのような感じでしょうか。コートの周りをすべて囲むのが良いか側面だけよいかは迷うところです。
さて、ここまで考えてきて、はたしてこの壁は必要でしょうか。設備的に複雑になりますし、高く飛び上がれるからといってそれほどパスミスが頻発することもないような気もしますので、ここはシンプルにバスケットの高さとリングの直径、バックボードのサイズのみ地球とは異なるものとしておきましょう。